そのスマートウォッチ、どこまで信じていい?──医療機器とそうでないものの見分け方

ガジェットノート

結論:「傾向」は信じていい。「実数値」は疑っていい

先に結論から書きます。

スマートウォッチの健康機能は、「昨日より」「先月より」という変化を見るには十分だと思っています。

でも、「今この瞬間の正確な数値」として受け取るには、まだ心もとないというのが正直なところです。

そしていちばん大事なのは、ここです。

認証があってもなくても、最終的に判断するのは自分自身です。

なぜそう考えているのか、順番に書いていきます。

私はApple Watch SE 2を、こう使っています

私が使っているのはApple Watch SE 2です。

Apple Watch SE 2の心拍数表示。76拍/分と表示されている
普段見ているのは、この画面です

見ているのは、歩数と脈拍だけです。

血中酸素や血圧を見たいと思ったことは、正直ありません。理由は単純で、数値の正確さに疑問があるからです。

そして脈拍を見るときも、こうしています。

Apple Watchを着けた手首の脈を、反対の手の指で測っている様子
画面の数字を見ながら、自分の指でも測ります
  • 画面の数字を見ながら、自分の手で脈を測る
  • 実際の数値と、画面の数値に差がないかを確認する
  • 差がないと確認できてから、画面で経過を追う

看護師なので、自分で測れます。だから測ります。

手間だと思われるかもしれません。でもこの確認をしていないと、画面に出ている数字が何を意味しているのか、自分では分からないんですよね。

同じ「健康機能」でも、2種類が混ざっています

ここから制度の話を、できるだけ短く書きます。

日本では、医療機器はリスクの程度によって分けられていて、必要な手続きの重さが変わります。

医療機器の区分。届出・認証・承認の3段階を示した図
同じ「医療機器」でも、審査の重さがまったく違います

つまり「医療機器」と一口に言っても、メーカーの自己申告で出せるものから、国の審査を通ったものまで幅があるということです。

そしてスマートウォッチの場合、ひとつの製品の中に、医療機器として認められた機能と、そうでない機能が混ざっています。

同じ画面に並んで表示されるので、見た目では区別がつきません。ここが混乱のもとになっています。

見分け方は「番号が書いてあるか」だけです

確認することは、ひとつだけです。

医療機器として認められている機能には、必ず番号があります。

クラスによって呼び方が変わり、届出番号・認証番号・承認番号のいずれかが割り当てられます。製品ページ、取扱説明書、アプリ内のどこかに記載されています。

実例を挙げます。Apple Watchの心電図アプリと心拍数の機能は、日本で医療機器として承認・認証を受けており、番号が公表されています。

一般的名称 番号
家庭用心電計プログラム 30200BZI00020000
家庭用心拍数モニタプログラム 30200BZI00021000

いずれもクラスⅡ(管理医療機器)で、2020年9月に承認・認証されています。

この番号は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のサイトで誰でも検索できます。気になる製品があれば、番号で調べてみてください。

逆に、番号が見当たらない機能は、医療機器ではありません。健康管理のための目安、という位置づけになります。

「血圧が測れます」と書かれていても、それが医療機器としての血圧計とは限りません。機能の表記と、認証の有無は別物だと考えてください。

機能ごとに整理すると、こうなります

おおまかな傾向です。同じ機能名でも、機種によって認証の有無が変わります。

機能 位置づけ 見るときのポイント
歩数・活動量 目安 傾向を見るには十分
心拍数 認証を取得している機種もある Apple Watchは認証あり(上記番号)
心電図・不規則な心拍の通知 承認・認証を受けた機種がある 製品ごとに番号を確認
血圧 認証を取っている機種は限られる ここが最も誤解が多い
血中酸素 製品により異なる 医療用の測定器とは別物のことがある
睡眠 目安 睡眠段階の判定は推定値

私が調べた範囲では、血圧計を内蔵して管理医療機器の認証を取っているスマートウォッチは、ごく少数でした。一方で「血圧が測れる」と書かれた製品は、数えきれないほどあります。

血中酸素については、認証に関する情報を確認できませんでした。分からないことは、分からないと書いておきます。

製品情報は変わります。購入前には、必ずメーカーの公式情報とPMDAで最新の状況を確認してください。

認証がなくても、無意味ではありません

ここまで読むと、それなら意味がないのでは、と思われるかもしれません。でも、そうではありません。

急な異常に早く気づく、という点では、確実に効果があります。

たとえば脈拍です。60なのか70なのか、正常の範囲で少しずれている分には、そこまで大きな問題ではありません。

でも、運動もしていないのに、急に130や140まで上がっている。そのときに通知が鳴る。

これは、急に脈が速くなるタイプの不整脈を早く見つけることにつながる可能性があります。こういう使い方は、十分に価値があると思っています。

ただし、こういうときは記録より先に受診してください

胸の痛み、強い息苦しさ、冷や汗、意識が遠のく感じをともなうとき。
これらがある場合は、数字を控えることより受診が優先です。症状がなく数字だけが気になるときは、記録して次の受診で伝えてください。

それともうひとつ、地味ですが大事なことがあります。

「脈を測ってみよう」と思うきっかけになること。

自分の健康に意識を向けるための道具として使う。これは、とても意味のある使い方だと思っています。

早く気づけば、それだけ予防につながります。発見が遅れるほど、体への負担が大きい治療が必要になっていく。それを未然に防げるなら、こうした道具の意味は十分にあります。

気づくための道具という点では、歩数計も同じです。こちらは別の記事に書きました。
「最近、歩くのが遅くなった」——それ、年のせいだけではないかもしれません

いちばん確実なのは、自分で測れるようになることです

そのうえで、この記事でいちばん伝えたいことを書きます。

自分で脈を測れるようになってください。

なぜかというと

こういう場面を想像してみてください。

スマートウォッチが「脈拍80」と表示していた。動悸があったので受診して、先生に「デバイスでは80でした」と伝える。

その数字の確かさを、誰が確かめたのでしょうか。

あなたも測っていない。医療者も、その瞬間に測ってはいない。腕に着けていた機械が、そう表示していたという事実があるだけです。

腕に着けているだけの数値を全面的に信頼するより、自分で実際の数値を確かめられる力の方が、はるかに大切だと思っています。

そして、これが本質だと考えているのですが——

スマートウォッチが、あなたの健康の責任を取ってくれるわけではありません。

健康管理の責任は、自分にある。まずそこから考えてほしいと思っています。

脈の測り方

難しいことはありません。

脈の測り方。手首の親指側に指を3本あてて1分間測る手順の図
手順はこれだけです

先ほどの写真のように、手首の親指側に指を3本あてます。

測る時間は、1分間にしてください。

30秒測って2倍する方法もありますが、これは脈が規則正しく打っている人にしか使えません。リズムが乱れている人だと、数え損ねて実際とずれてしまいます。

そして、自分に乱れがあるかどうかは、測ってみないと分かりません。だから最初は1分間で測ってください。

見るのは2つだけです。

  • 脈の数(成人の安静時は、おおむね1分間に60〜100回が目安とされています)
  • 脈が均等に打っているか(飛んだり、間隔がばらついたりしていないか)

そして、測った結果をありのまま、受診のときに伝えてください。自分で測った数字なら、それは根拠のある数字になります。

最後に

認証を受けているデバイスの品質が高いことは、否定しません。必要だと感じるなら、使ったらいいと思います。

ただ、認証があってもなくても、最終的に判断するのは自分自身だということは、覚えておいてほしいです。

デバイスだけに頼るのではなく、自分で測れる力も身につけてほしい。

自分の力と、スマートデバイス。その両方をうまく使いながら、自分の健康を管理していってほしいと思っています。

参考にした情報

本文中のApple Watchの承認・認証番号は、公表情報にもとづき2026年9月時点で確認したものです。製品仕様および認証状況は変更される場合があります。


※この記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。認証状況や製品仕様は変更されることがあります。購入前には必ず最新の情報をご確認ください。体調に不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました